2012年12月25日火曜日

経営者の条件

 先日の読書会で、サンリオの辻社長のことを紹介したが、改めて読んでみると、これまた、以前、読書会で取り上げた、ライフネット生命の出口社長との共通点が見えてきた。

 辻社長も、出口社長も、僕がすごく好きな経営者なのだが、どちらも

  • 自分が世の中で成すべき役割を意識して事業を行っている
  • 勘や経験ではなく、数値と事実に基づいた経営をしている
  • 本好き
という特徴があるように思う。
 特に、数値と事実に基づいた経営というのは、非常に重要なのだろうと思う。

 これも先日、インターネット上の記事で読んだのだが、大前研一氏が「起業家こそ経営の勉強をせよ」ということを言っている。
 辻氏は、サンリオを作る前に、当時、たくさん出ていた新しい経営理論について本で読み、学んでいたそうです。まだまだ、形が出来ていなかったサンリオでは、それらの理論が核となり、会社形成に一役買ったのだろうというような解説が書かれていました。

 日本の武道や芸能では、よく「守・破・離」ということが言われます。
 今のような、世の中の動きが非常に速く、今までの常識が通用しなくなっているような時代でも(むしろそういう時代だからこそ)、基本に忠実であるということが重要な気がします。
 単に表面的なことだけ、学んで真似してというのではなく、基本を守り、更に、そこに自分なりのエッセンスを加味してこそ、経営もうまくいくのだと思います。

 そういう意味で、上に書いた、辻社長、出口社長の二人とも、本から学び、更に数値と事実に基づいた経営を行い、自分の役割を意識したブレない経営を行っているというのは、興味深いですね。

2012年12月24日月曜日

2012.12.23 VL読書会

 2012.12.23(日) 10:00から、3連休の中日にも関わらず(笑)、VL読書会を開催しました。
 一応、番外編としていたのですが、いつもとそう変わらず、まったりと進みました。

 今回、紹介した本の1冊目は
サンリオの奇跡―夢を追う男たち (角川文庫)
です。
 これは、私が高校生の頃に読んだ本で、サンリオの創業からの物語について書いてある本です。読んだのは高校生の頃ですが、文庫になる前に出版されたのは1979年なので、私が小学生の時ですね。
 サンリオの創業者は、辻信太郎という方なのですが、元々は山梨県庁に勤めていた人です。工夫して自分の仕事の効率を上げても評価されない県庁の業務に嫌気がさし、後のサンリオを立ち上げます。
 サンリオはご存知の通り、いろいろなキャラクター商品を出していますが、後に専務になる荻洲照之という人との出会いによって大きく発展して行きます。
 荻洲さんは、元々は商社(現三井物産)にいた人ですが、アメリカにいたときにグリーティングカードに出会い、日本で販売することになります。日本にはその頃、そのような習慣は無かったので、当初の販売実績はさんざんだったのですが、その頃に辻氏と出会います。
 この本に書いてあった出会いも、結構面白くて、事実は小説よりも奇なりと言いますが、一人の占い師を介して出会っているようです。本当かどうかはわかりませんが(笑)。

 この本の中で、印象深いことと言えば、辻氏は自分たちの仕事を第4次産業というように位置づけていたようです。
 ご存知の通り、第1次産業は農業や水産業、第2次産業は一般製造業や加工業、第3次産業はサービス業として分類されます。
 辻氏はそれに次ぐ第4次産業という分類は無いものかと考え、心の充足を与えるものこそが第4次産業に分類されるという考えに至ります。例えば、宗教や教育などです。その中で、自分たちは何を売るのかと考えたときに「愛と友情」を売ろうという結論を出します。その可能性は無限で、将来は1千億円どころか10兆円を超す市場になると(もう、50年近くも前の話です)。
 以外と、今のソーシャルネットワークの発展も、その流れにあるような気もちょっとしますね。

 ところで、この本の中にはサンリオがどのようにコンピュータを活用していったかについても色々と書かれています。
 非常に古い本なので、今となっては当たり前に思えるようなこともたくさんありますが、せっかくなので書いておきたいと思います。

 サンリオは全国の小売店に対して、商品を発送するために、在庫の管理をする必要があります。
 当初は、コンピュータなどありませんから、日々の在庫管理もかなりいい加減で、きちんと把握できていなかったようです。そこで、「棚札」というものを作り、あらかじめパッケージの納入分の数値が一覧として書かれている札を倉庫に用意しておきます(納入が500パッケージだったら、1から500までの数値が書かれている札)。そうして、倉庫から商品を出すたびに、その分、数値を消して行くというルールにします。発注から納品までの期間を想定し、その数値のところに印をつけておくことによって、倉庫内の在庫が一定数まで減ったら、発注担当者に連絡するということを決めておけば、アルバイトでも在庫管理ができるようになります。
 また、月によって、数値を消すボールペンの色を変えることによって、月ごとの商品の動きも把握することができるようになったそうです。今となっては、このような管理をコンピュータでするのは当たり前ですが、在庫の動きを数値できちんと把握するというのが、その当時のサンリオの強みになっていたのかもしれません。

 その後、コンピュータを導入し、売掛金の入金の管理などもしていたようですが、販売先が増えてくると、当然、処理量も増えてきます。当時はパンチカードでデータの入力をしていて、パンチャーも雇わなければならないし、パンチマシンもどんどん購入する必要が出てきました。コンピュータメーカーに相談すると、もっと大型の機械を買えという答えが出てきます(単純な答えはそうなるでしょう)。
 そこで、出てきた工夫が、入金件数と未入金件数を調べると、未入金件数の方がずっと少ないので、それまでは入金件数を処理していたのを、未入金件数を処理する方式に変えることによって、コンピュータの性能を上げずに処理ができるようになったという例が載っていました。安易に情報システムを導入せずに、仕事の仕方(処理の仕方)を変えることによって、問題解決をしたという良い見本になっていると思います。
 更に、処理件数が増えると、毎回、パンチカードを作るのではなく、同じ発注が繰り返されることに注目して、カードを使い回すことにより、手間とミスの両方を削減したり、カードによる入力が限界になったときに、当時、まだ例が無かった、プッシュホンを使った発注システムの開発、更には、各販売店に、事前に発注内容を入力しておいて、入力後にデータを一気に送るための端末を置いて、コンピュータへのデータ入力時間と電話の通話料を削減した方法など、いろいろと興味深い事例が掲載されています。
 手段はともかくとして、安易な方法で問題解決しようとせず、持っている資源を最大限に活かして問題の解決を試みるという姿勢は見習うべきものがあると思います。

 辻信太郎氏は、僕が非常に好きな経営者の一人です。
 辻信太郎氏は読書家であり、また愛や友情というものを大切にする一方で、ビジネスを数値化し、ロジックで考えられるという非常にバランスの取れた経営者なのかなと思います。
 以前、読書会で紹介した、ライフネット生命の出口治明社長も、旅と本と人から学び、ビジネスでは「数字、ファクト、ロジック」と言っているということで、すごく共通点を感じます。

 2冊目はオマケなのですが、
突撃!グフフフ映画団 (講談社文庫)
です。

 これは、実は手元に本が無いので、全くの記憶頼りですが、昔、札幌にあった「ジャブ70ホール」という映画館を設立した時の話です。
 映画好きが、自分たちの映画館を作ろうとして、頑張る話なのですが、全然、設立のための費用が無いため、大学の学生に設計させて費用を節約しよう(実現しないのですが)など、バタバタ劇がとても面白かった記憶があります。
 また、映画とは全然、関係ないのですが、(確か)札幌市役所の職員用食堂によく出入りしていて、「玉子丼」を食べていたというシーンが出てきます。
 玉子丼って、どんなのを想像しますか?
 多分、親子丼の肉抜きを想像する人が多いと思うのですが、ここの玉子丼は、ごはんに卵焼きが乗っているというメニューで、しかも、おばちゃんが「そこにタレがあるから」と指差したものが、どうみても、ただの醤油という、キョーレツなメニューだったようです。
 札幌に住んでいる間に、一度、食べてみれば良かった。
 ちなみに今は知りませんが、僕が住んでいた高校生くらいまでは、札幌はすごく映画館が多くて、多分50軒くらいはあったような記憶があります。

 3冊目は、参加者が紹介してくれた
インパクト志向(田中 裕輔、東洋経済新報社)
 です。
 ちょっと前に出た「なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか?」を書いた、田中裕輔さんの書いた本です。
 どうすれば収入を増やせるのかというようなノウハウ本ではなく、なぜ働くのかというったWHYについて書いてある本だそうです。
 最近は、そのような仕事の意義とか、人生の意義みたいなことを書いてある本が多いですねーという話になりました。流行りなんでしょうか?(笑)

 話の途中、ジョブズの話から、Macの話まで、いろいろと話題があちこち飛びましたが、そのような発散した話も、こういう読書会の中では有効なのかなと思いました。

 本日の読書会で使ったPreziを下に貼っておきます。

2012年12月17日月曜日

2012.12.16 VL読書会

2012年12月16日(日) 10:00から、2週間ぶりに、VoiceLink™とPreziを使った読書会を開催しました。

 今回も、前回に引き続き、特に課題図書を設けるということも無く、参加者のお気に入りの本について紹介してもらいました。

 まずは、なれる!SE―2週間でわかる?SE入門 (電撃文庫)です。

 これは、いわゆる「ラノベ」で、IT業界(というか、SEの生態)についておもしろおかしく書いてある小説です。
 ひょんなことから、システム開発会社に入社した新人君と、女子中学生にしか見えない凄腕の上司のやりとりが面白いです。
 よく、システムエンジニアは3Kの職場だと言われますが、この小説の中でも、終電が無くなるから帰ろうとする新人君に対して、上司は

「あんたの終電なんか、お客さんに関係ない!」

と言い放ちます。
 まあ、仕事なので、僕からすれば当然という気もするのですが、世間ではどうなんでしょうね?
 もっとも、終わらない仕事を割り振るプロジェクトマネージャは優秀だとは言えないと思いますが。

 この本の紹介をしていたとき、参加者から

「仕事の締め切りって誰が決めるの?」

という質問がありました。
 IT業界は、プロジェクトの連続ですから、期限を切って、スケジューリングして…っていうのが普通の流れなのですが、業界にあまり関わっていない人からすると、不思議なんですかね?どうなんでしょ?
 普通は、お客様と交わした契約に間に合うように、スケジュールを組み、日々の仕事に落とし込んで、その日の予定を決めていくことになると思います。

 ところで、SEって、やっぱりわかりにくいんでしょうね。
 一般的に、プログラマのように思われていることも多いのですが、僕はSEの仕事って、お客様の希望をうまくシステムの形に落とし込むことだと思っています。当然、要件定義から関わることも多いですし、基本設計、詳細設計、その他に、プログラムやテストもやります。
 場合によっては、情報システム構築の前に、BPR(Business Process Re-engineering)が必要になることだってあります。でも、形が無いから、見えづらいんでしょうねー。

 あと、わかりにくい言葉で、ケムに巻くSEも多いということも言われました。
 確かに「こんなこともわからないの?」というようなことを言うSEは論外なのですが、実は、これはSEに限らず、どこの業界でも起こりがちなのかなと思っています。
 人は、どうしても自分が関わっている業界のことは、他の人も知っているだろうというような前提で話してしまうことが多くなってしまいます。IT業界だけじゃなくて、農業でも、製造業でも、教育業界でも、その業界の仕事の仕方というものがあって、お互いにうまく意思疎通しなければ、良い仕事はできませんよね。
 ただ、先ほど書いたように、僕自身は、お客様の希望を形にするのがSEの仕事だと思っているので、きちんとお客様の考えている意図を汲み取るのもSEの仕事の一つだと思っています。そうなると、わかりやすい言葉で、説明したり、相手からの情報を引き出すというのは、すごく重要になってきますよね。

 話しを本に戻しますが、そんなIT業界とSEの仕事が面白くわかる一冊ではないかと思います。

 2冊目は、アントキノイノチ (幻冬舎文庫)です。
 映画化もされた、さだまさしさんの著書です。

 身寄りのない人の遺品を整理する仕事についての本で、その仕事を通して成長していく物語のようです。
 読んだ人は、号泣したと言っていたので、今度、読んでみようと思います。DVDも借りてみようかな。

 3冊目はビジョナリーカンパニー3 衰退の5段階です。
 ビジョナリーカンパニーは、有名な本なので、読んだことのある人も多いと思いますが、この本は、今年度の夏に開催された「ITCカンファレンス2012」というイベントで紹介されていたので、読んでみたそうです。
 副題にもあるように、企業の衰退の段階について記述されているのですが、これは

  • 第一段階 成功から生まれる傲慢
  • 第二段階 規律なき拡大路線
  • 第三段階 リスクと問題の否認
  • 第四段階 一発逆転策の追求
  • 第五段階 屈服と凡庸な企業への転落か消滅
という段階を踏むそうです。
 成功のパターンというのは、なかなかつかむのが難しいですが、失敗というのは必ず原因があるので、このようなパターンを頭に入れておくというのは重要かもしれませんね。

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」 by 野村克也
(追記:これは野村克也の言葉ではなく、松浦静山の剣術書『剣談』からの引用だそうです)

 最後に、涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)です。
 これも、ライトノベルですね。
 「涼宮ハルヒの憂鬱」も有名なので、読んだことがある人も多いかもしれません。
 小説だけではなく、アニメなども出ていますね。

 評判になっているライトノベルの面白いところは、細かいところまで世界観が作りこまれているということがあって、それがファン層を厚くしているのではないかという話しになりました。
 前回の読書会で紹介したゲームにすればうまくいく―<ゲーミフィケーション>9つのフレームワークの中でも、「上級者向け」という要素があって、深いファンに対しては、ゲームをクリアした後でも楽しめるような仕掛けを作っておくという説明がありました。
 世界観を細かく作りこんでおくというのも、それに通ずるところがありそうですね。

 今回、書き込んでいった読書メモを下に張り付けておきます。

2012年12月2日日曜日

2012.12.02 VL読書会

 2012年12月2日(日)10:00から、VoiceLink™とPreziを利用して、オンライン上で読書会を開催しました。
 今回の読書会は、特に課題図書を決めず、参加者の好きな本について紹介してもらうことにしました。

 まず、最初に紹介された本は、

生き方―人間として一番大切なこと (稲盛和夫、サンマーク出版)

 自分の本棚ではなく、お父さんの本棚にあり、何度も読んだ形跡があったということですので、今度、自分も読んでみようと思います。

 次に

ゆびぬき小路の秘密 (福音館文庫 物語) (小風さち、福音館書店)

です。これは、童話ですね。
 この本を紹介してくれた方は、図書館でこの本を借りた後、読み終える前に返してしまって、すごく気にかかっていたそうですが、10数年ぶりに改めて、この本に出会い読んでみたそうです。
 ちなみに、童話では、私も思い出の本があって、

ももいろの川は流れる (矢野 徹、フレーベル館)

という本がすごく思い出に残っている本です(もう、絶版ですが…)。
 これは、SF童話で、宇宙飛行士たちがある星に探検に行くのですが、そこに住んでいた犬(のような生き物)と交流していく話です。
 僕が小学校1年生の時、入院していた病院で読んだ記憶があります。

 それから、有名な

スティーブ・ジョブズⅠ,Ⅱ (ウォルター・アイザックソン、講談社)

が紹介されました(実は、僕はまだ読んでません(^-^;))。紹介してくれた人は
「ジョブズー、何で死んじゃったの~」
と言っていましたね(笑)。

 それと、前回のVL読書会でも少し話が出た

BE ソーシャル! ―社員と顧客に愛される5つのシフト(斉藤 徹、日本経済新聞出版社)

この本は、現代のようなソーシャル時代における経営指南書のようです。
これも、今度、読んでみようと思います。

 最初の紹介者が、最後に紹介してくれたのが

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か (エリヤフ・ゴールドラット、ダイヤモンド社)

です。
 この本は、私も読んだことがあったので、ちょっと盛り上がりました。
 これも有名な本で、TOC(制約理論)について、小説仕立てで説明している本なのですが、シリーズ化されていて、紹介してくれた人はまだ読んでいなかったのですが、個人的には3冊目のチェンジ・ザ・ルール!は、我々のようなITコーディネータ及び、SEに取って必読書だと思っているので、逆に紹介してあげました。

 私は、2冊の本を紹介したのですが、まず1冊目として

ゲームにすればうまくいく―<ゲーミフィケーション>9つのフレームワーク (深田 浩嗣、NHK出版)

です。先日から、何度か、このブログでも紹介していますが、ソーシャルゲームなどを例に取り、ビジネスをゲーム化することによって、顧客満足度を上げていくための手法について説明しています。

  1. おもてなし
  2. 可視化
  3. 目標
  4. オンボーディング
  5. 世界観
  6. ソーシャル
  7. チューニング
  8. 上級者向け
  9. ゴール

という9つのフレームで、お客様に対する満足度を上げていくのですが、事例としては

  • 縮小化する市場でハーレーが売上を上げているという事例
  • セブンイレブンで冬でも冷やし中華を売っている事例(仮説検証によるチューニング)
  • AKB48のじゃんけん大会
  • ディズニーランドのスタッフと会社の間の世界観共有
などについて書かれています。
 この方法論を使って、ITコーディネータをどのように増やして行ったらいいかということについて、ちょっと考えかけているので、それは別の記事を御覧ください。

 2冊目としては、

生体から学ぶ企業の生存法則 (織畑 基一、ダイヤモンド社)

です。これは、タイトルの通り、生体と企業のアナロジーから、企業の生き残りについて考察している本です。
 もう20年近く前の本で、これも絶版になってしまっているのですが、個人的に、結構、お気に入りの本です。
 大きく分けると

  1. 企業の神経構造
  2. 企業の精神構造
  3. 企業の生命力
  4. 進化

について考察されています。
 神経構造というのが会社という組織としての在り方について書かれているところで、バブル以前は、日本企業の強みのというのが、現場の強み(末端)に依存していて、それまでの高度経済成長の時代はそれでも良かったのだが、これからは、中枢神経(経営戦略部門)を鍛えていく必要があるというようなことが書かれています。
 → これは、人間が脳を発達させることによって、地球上で勢力を伸ばしてきたということに擬えています。
 企業の精神構造というのは、企業の持っている社風とかノウハウのようなものです。
 野中郁次郎先生の提唱した「暗黙知」と「形式知」などについても書かれています。
 会社の中では、そのような「暗黙知」というものも共有し、組織力を上げていく必要があります。
 ちょっと話は飛びますが、「暗黙知」に関しては、認識論の中に「アフォーダンス理論」というものがあって、これは個々の要素の組み合わせによって情報の認識がなされるわけではなく、情報は既に環境の中にある(情報を受け取る側が、それを受け取ることができるようになると、情報を認識できる)という考え方に基づいた理論なのですが、個人的に、この理論は、何となく「暗黙知」の考え方に類似しているような気がしています。
 つまり、暗黙知としての知識は既に環境の中にあるので、それを認識できる側に準備ができたときに知識として共有できるというような感じがしています。これについては、今後、もう少し考えてみたいと思っています。


 ところで、この本について話をしているときに

偶キャリ。―「偶然」からキャリアをつくった10人 (所 由紀、経済界)

という本についても紹介して頂きました。ちょっと興味があるので、これも手に入れて読んでみようと思います。


 企業の生命力というところでは、企業体(会社)というのは、「企業の実体」の乗り物に過ぎないということが書かれています。では、この実体というのが何かというと、それは人の持つビジョンだったりビジネスモデルだったりするわけで、最終的には人に帰着するというような書き方になっています。
 これは、ドーキンスの書いた利己的遺伝子に通ずる考え方で、会社の存続というのは、組織(入れ物)の存続ではなく、社風やミッションというものがどう受け継がれていくかということを考えなければならないのかなというように読めました。
 話の中で出たのですが、例えば本田技研工業などでは、創業者である本田宗一郎の理念が社員にしっかり受け継がれていて、それが企業としての生命力に繋がっているだろうということです。
 最後に進化という話ですが、ダーウィンの進化論である「環境への適応」だけではなく、日本の進化論学者である今西錦司の唱えている「棲み分け」などにも言及していて、企業も環境への適応とともに、事業ドメインをどうするか、顧客や地域などによる棲み分けも必要なのかなどということが書かれています。
 ところで、今回は最後に紹介したのですが、この本の中では、生命とは何かということについての説明もされていて、2人の学者による定義が紹介されています。
 オパーリンは「物質の代謝」(外部の物質を取り入れて、体内の物質を排出する)という説明をし、シュレーディンガーは「生物体は負のエントロピーを食べている」という説明をしています。
 どちらも、すごく大雑把に言えば、外部の情報をうまく取り入れ、新陳代謝を図っているということです。
 外部からの物質、情報などを取り入れて行かなければ、生命体は自身を保つことができないというのと同じように、企業もうまく外部からの情報、人材などを取り入れて、新陳代謝を図っていく必要があるというようなことが書いてありました。

 また、Preziの方には、当初、書いていなかったので、今回は紹介するつもりは無かったのですが、この本の紹介の流れの中で、

模型は心を持ちうるか―人工知能・認知科学・脳生理学の焦点 (ヴァレンティノ・ブライテンベルク、哲学書房)

という本についても紹介しました。
 詳しくは、後日、改めて紹介したいと思いますが、これは模型にある仕掛けを入れていくことによって、その動きを観察している人が、あたかも模型が意思を持って動いているかのように見えるという思考実験の本です。
 この手の本が、結構好きなので、このような本については、また紹介したいと思います。
(実は、この本も絶版で、古本か英語版しか手に入りません)

 最後に本を紹介してくれた方からは、

猪木寛至自伝 (猪木 寛至、新潮社)

を紹介して頂きました。
 プロレスファンの赤本と言っていましたが、アントニオ猪木が子供の頃に家族でブラジルに移民として渡った話から、引退までの人生について書かれているそうです。
 内容もそうですが、結構、プロレスの話に花が咲きましたね(笑)。

 それと、本の紹介というわけではないですが、同じく参加していた方に好きな本として

恋文 (連城三紀彦、新潮文庫)

を紹介してもらいました。小説ですね。
機会があったら、また紹介してください。

 メッセージボードの中には、星新一のショートショートが好きだったなどという書き込みもありましたよ。

 こんな感じで、それぞれの好きな本について紹介してもらうというのも良いですね。
 興味が出てくる本もありますし、自分の読んでいる本に関係する別の本についても気づきが得られそうです。
 今後もまた、開催してみようと思います。

 このVL読書会は、結構、時間が長くなってしまいがちなので、次からは何とか1時間くらいで終わらせたいと思います。

 下に、今回のPreziメモを掲載しておきます。

2012年12月1日土曜日

本を読んで、ちょっと考えてみた その2

ゲームにすればうまくいく―<ゲーミフィケーション>9つのフレームワーク

 という本を読んでいるというのは、前回のブログにも書いたとおりだが、ここに書かれている手法を使って、自分が持っているITコーディネータという資格の保有者を増やす方法を考えてみる。

 前回書いた通り、この手法は、


  1. おもてなし
  2. 可視化
  3. 目標
  4. オンボーディング
  5. 世界観
  6. ソーシャル
  7. チューニング
  8. 上級者向け
  9. ゴール


という9つのフレームワークから成っているのだが、順に見ていくことにする。

 まず、「可視化」だが、これは、実際に参加している人が、自分自身の状態、状況を客観的に確認することだと思えば良い。

 ビデオゲームでは、スコアが出てくるものが多いが、それに相当するものをITコーディネータの活動でも考えてみた方が良い。活動の評価指標と考えてみても良いのだろうが、何を使うのかというのが重要になる。

 ITコーディネータ資格は、毎年、更新する必要があり、一定のポイントを取ることが求められるのだが、それは1年に1回しか確認しない資格者も多いと思う。なぜなら、資格更新は年に1度しか求められないから。
 点数化するのであれば、それは義務として課すのではなく、ポイントを取ること自体が目標であり、喜びである必要があるのだと思う。以前は、ITコーディネータ制度は、「ITコーディネータ」と「ITコーディネータ補」という2段階に分かれていて、更新に必要なポイントにも差があり、資格を取った当初は「補」から始まり、一定期間経過するまで「ITコーディネータ」にはランクアップできなかったのだが、制度改正によって「補」が無くなり、誰でも最初から「ITコーディネータ」を名乗れるようになってしまった。
 個人的には、これは最悪の制度改悪だと思っていて、(あくまでも、『ITコーディネータ』の)資格取得に対するハードルは下がったが、きちんとITコーディネータとしての仕事をしていこうという人にとっては、モチベーションを下げることにしかならない。
 他のOracle Masterや、シスコの技術者などと同じように、ITコーディネータも何段階かに分けて、「あと何ポイント獲得したらランクアップ」のような形式にした方が自分の活動状況に対してもモチベーションが上がるのではないだろうか?

 さらに言えば、ランクアップに関しても、できれば1年に1回ではなく、もっと短いスパンで(できれば随時)できるようにした方が良い。

 「目標」に関しては、資格を取る人はそれぞれ、様々な目的を持っていると思うが、自分のスキルを上げたい人、ビジネスに直接活かしたい人、ITコーディネータのコミュニティに入りたい人など、多くの目的があるはずなので、それぞれに対して、適切な目標値を設定させる必要がある。特に、ビジネスに活かしたい人は、どのようにその目標を達成していけば良いのかということまで含めて、次の「おんボーディング」で伝えていく必要がある。

 「可視化」、「目標」、「オンボーディング」の3つを合わせて考える必要があるが、例えば、ITCのポイント獲得(あるいはランクアップ)に応じて、協会から得られるビジネス情報や、獲得できる教材にも差をつけてはどうか?(あるいは、教材やセミナー受講などの割引でも良いかも)
 それによって、ポイント獲得にも、より明確な目標が出てくるだろう。
 実は、自分が理事をしている社団法人でも、多少、形は違うがそのようなポイント制を用意して、ポイントを確保した人ほど、ビジネス案件の紹介を受けやすくしている。

 「オンボーディング」は、ゲームに参加しやすくするための仕組みだが、これは、1つには、今年度から協会で実施した、ケース研修受講の日数短縮、及び受講費用の引き下げが含まれるだろう。
 しかし、それだけでは充分ではなく、ICTを利用した時間的制約からの解放や、物理的な制約からの解放というのも考える必要がある。今までの15日間から6日間に日数が短縮されたとはいえ、必ずしも、自分の都合に合わせてケース研修が開催されるわけではないというのは、今までとそれほど変わってはいない。

 更に、資格取得のためには、ケース研修受講と筆記試験の合格の両方が必要だが、筆記試験に関して、過去問の提供、筆記試験対策講座などの準備が非常に弱いように感じる。その整備は急務のように思える。
 また、ITコーディネータの資格を取った後、どのようにその資格を活かして行ったらいいかについては、もう少し、具体的な手順まで示してあげるというのが、理想だと思う。
 これも、以前から協会には提案しているのだが、新人ITCほど、協会からのバックアップを用意すべきであって、理想的には、ビジネスの現場に(アシスタントとしてでも)入り込めるような案件を紹介するのが良いのだが、そう簡単には行かないと思うので、例えば


  • マスメディアに事例や論文などを発表する機会を用意する
  • 大手マスコミでなくても、協会のメルマガ、機関誌などを使って、新人ITCの紹介をする
  • 資格保有者のみに与えられる有益な情報を準備する


などなど。資格を取った時のメリットを明確にし、希望する人に対しては、それらの体験をきちんと積ませるような仕組みが必要だろう。

疲れたので、「世界観」以降に関しては、次回以降のブログで(笑)。